
小さな星があった。
その星は、今よりもっと、大きくなりたい。
もっと輝きたいと願った。
そして、大きく輝けるはずだと信じていた。
大きな星をねたみ
自分よりも小さな星を蔑む。
小さな星の周りには、何も無い。
ただ、暗闇が広がっているだけ。
その暗闇の中、小さな星の、小さな光が輝いていた。
小さな星は、どうすればもっと輝けるのかを考えた。
全身に力を込めたり、体を大きく大きく広げたり
体を左右に振ってみたり、宙返りしてみたり。
それでも、輝きは変わらない。
遠くで、流星。
それは、速く、そして美しかった。
小さな星は考える。
流星は、塵が発光したもの。
それなら、星である自分が流れれば
もっと、輝けるのではないかと。
ただ、流れるのは怖かった。
自分が壊れ、消えてしまう可能性もあるから。
一瞬の輝き
小さな星は考え、流れる代わりに
飛んでみることにした。
ためしに、全力で飛んでみる。
元の場所が、遠くなっていく。
小さな星が照らしていた場所は、暗闇が飲み込んでしまった。
飛べば飛ぶほどに、次第に周りが
明るく輝いているように思える。
それが楽しくて、嬉しくて、
小さな星は、飛び続けた。
ずっとずっと、飛び続けた。
輝きは増し、光が溢れていく。
もういいだろうと、小さな星は、飛ぶのをやめた。
だが、光は消えず、辺りは煌々と輝いている。
おかしいと思い、小さな星は、辺りを見渡す。
月がそこにあった。
あまりにも巨大な月が。
自分が光っていたわけじゃないと知った小さな星は、己の思い上がりを恥じた。
輝きも小さくなり、弱くなった。
そんな小さな星に対し、
大きな声で、月が、小さな星に話しかけた。
「どうかしたのかね、そんなに暗くなって。苦しいのかい?」
大きな声に驚きながらも、小さな星は、小さな声で返事をする。
「苦しくなんてないよ。ただ、恥ずかしくて。」
「何を恥ずかしがっているんだい。」
「僕は、あんたみたいに大きくもないし、輝きだって弱いから。」
「それを、情けなく思い、落ち込んでいたのかい?」
小さな星は答えない。
ただ、目の前の月から目をそらした。
月は、大きく、優しげな声で話しかける。
「私は君たちとは違う。
君たちにみたいに自らを輝かせる術を知らない。
私が輝いているのは、あの太陽のおかげなのだ。
それを忌々しく思う時もあるがね。」
「だけど、それでも、僕はあんたが羨ましい。
僕だってもっと輝きたい。皆から注目されたい。
すごいって言われたいんだ。
あんたのことは皆が知ってる。
知らない奴なんていやしない。
皆は、僕の名前すら知らないっていうのに。」
「誰もが私を過大評価してるにすぎないのだよ。
誰かの力で輝くのが、そんなに羨ましいかい?
私の裏側をみてごらん。きっと、暗闇が広がっているだろう。
私は太陽の光を遮る障害物でしかない。
私とは違い、君には、自分で輝く力がある。
私を羨ましく思う必要もないだろう。」
「それでも、僕はあんたが羨ましいんだ、妬んでしまうんだ。」
「君はそんなことを、思う必要は無いんだ。
私こそ、あの太陽を羨ましく思うよ。
だが太陽は、誰かのためになんて、そんなことは考えていないだろう。
ただ、自然に、光や熱、そして輝きを放つのだ。
誰のためでもない。自分のためにね。
ほら、元の場所にお帰り。
君がいない、あの場所は暗闇が訪れているだろうから。」
小さな星は、振り絞るように声を出した。
「僕がいてもいなくても、何も変わりはしない。
毎日は過ぎていくし、意味なんて無いよ」
その問いに、月は力強く反論する。
「君が君を必要としなくても、誰かは君を必要としているものだ。」
その言葉に、小さな星は驚いた。
誰かのためになんて考えたことはなかったから。
少し考え、小さな星は、誰かのために生きてみようと思った。
必要としてくれる誰かがいるかもしれない。
そう考えたから。
小さな星は、自分のいた場所のことを思い、まだ見ぬ誰かを思った。
そして、月に感謝の言葉をのべ、元の場所へと飛び、帰っていく。
「君は、まだ輝ける。」
月の大きな声が、小さく聞こえた。
小さな星の周りには、相変わらず暗闇が広がっている。
その暗闇の中、小さな星の小さな光が輝いていた。
その光は、以前より少しだけ強く、
そして、眩しい。