特集 volume13
2002/10/1

守ってあげたい
(さかな編)

 イルカやクジラなどのほ乳類を除き、海の生きもののほとんどは、卵を産みます。
 その方法はさまざまで、水面近くまで上っていって水中に放散させるもの(ベラの仲間など)、石の上や貝殻、海藻などに産み付けるもの(クマノミやアオリイカなど)、はては口の中に入れたり、体にくっつけて生まれるまで保護するもの(イシモチやイシヨウジなど)、同じ種類がいっせいに精子と卵子を放出するもの(サンゴなど)があるようです。ほんとうはもっといろんな方法があるでしょう。
 ふだんはあまり気にもしないマツバスズメダイやクマノミなどが、自分たちの生んだ卵を必死で守っている姿を見るとき、いじらしさを感じると同時に、「がんばって」と応援したくなります。ただしゴマモンガラだけは、そんな気になりません。 

写真はすべて長崎・辰の口で撮影したものです。

 卵を口にくわえて守っているオオスジイシモチのオス。卵がまだピンク色をしているから、産んでからそう時間は経過していないと思います。ときどき卵を口から出して向きを入れ替えて、まんべんなく新鮮な酸素が供給できるようにしています。
 テンジクダイの仲間は、メスが卵を産むとただちにオスが口の中に入れ、孵化するまで保育することがよく知られています。カエルアマダイ(ジョーフィッシュ)なんかもそのようです。その間、オスはやはり飲まず食わず(?)なんでしょうか。
 テンジクダイ科のオスに生まれなくて本当によかったと思います。

↑ クマノミの卵

← クマノミの成魚

↓ マツバスズメダイの卵
 スズメダイ科の仲間には、岩などに産みつけた卵を、孵化するまで親が近くで守るのがいます。辰の口では、その代表格がクマノミとマツバスズメダイでしょうか。卵を守っている時期、うっかりその近くを通りがかっただけで、すぐに攻撃されてしまいます。写真を撮ろうとする場合はなおさらです。しかもウエットスーツの上からじゃなく、皮膚が出ている部分を攻撃してくるからたまりません。すさまじいまでの親心ともいえます。
 少し遠くから観察していると、孵化するまでかいがいしく卵の世話をしているのがわかります。
 トゲウオ科のさかなは、オスまたはメスのどちらかが、孵化するまで卵を守っています。まあ口にくわえたりすることはないからエサは食べることができるとは思います。しかし、大変なことには違いありません。
 一度に産む卵の数が少ない魚は、生存率を高めるために、孵化するまで保育してるんじゃないかと勝手に思っています。
ニシキフウライウオ
 この魚は、メスが卵を守ります。腹ビレで包み隠しているように見えるピンクの部分が卵です。腹ビレはくっついて袋みたいになっているそうです。なお、オスが寄り添っていることが多いということでしたが、このときはメスだけしかいませんでした。まあ辰の口では1匹しか見ていないのでエラそうなことはいえませんけれども。
ノコギリヨウジ
 ブルーのラインがあるほうが背中で、その反対側、壁を向いているほうが腹側になります。その腹側に、体と同じ色をした卵が並んでいます。いつも暗いところにいるので目につきにくいですが、遊泳性ですから、卵を持っているかどうかの確認はわりと容易です。
イシヨウジ
 腹の下、黒くなっているところが卵です。この時期のオスは、腹が平べったくなり、ちょうどツチノコみたいになっているのでわかりやすいですね。ただし遊泳性ではないので、卵をつけているかどうかまでは確認しづらいと思います。
タツノイトコ
 タツノオトシゴ同様、卵はオスの腹にある袋(育児嚢というらしい)に産みつけられ、そこから産まれてきます。一度だけ、産まれたばかりと思われる数ミリの稚魚を見ましたが、ほんとうに大人と同じ形でした。さすがにピントが合わずに写真を撮れなかったので、じっくり肉眼で観察しておきました。

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